◆電子債権ネットの準備会社が設立
「電子債権ネット」がいよいよスタート
【はじめに】
古い歴史を持つ、ペーパーベースの「手形」の「電子化」の動きが、
全銀協ベースでスタートすることになりました。
「手形の電子化」に関しては、いろいろな試みや検討が行われてきましたが、
法的な整備の問題、システム移行の採算性の問題等、従来の「商習慣の中で
定着化している手形システム」を電子化するには、各種の紆余曲折がありました。
今回の全銀協ベースの取り組みで、いよいよ「電子債権システム」が
本格化しようとしています。
【電子債権記録機関の設立】
手形の電子化を実現するための全銀協ベースの電子債権記録機関
「でんさいネット」の準備会社が、平成22年6月8 日に設立されました。
平成24年5月の開業を目指しての準備会社のスタートです。
株主は、100%全銀協となっています。
実際にシステムが稼動するのは、二年後ということですが、
全銀協レベルでのシステムが稼動することになります。
既に、株券に関しては、平成21年1月5日より電子がスタートしており、
株券のペーパレス化がスタートしています。
これと同様に「手形のペーパレス化」を推進しようというものです。
手形に代わる新たな支払手段である「電子債権記録」を記録・流通させる
社会インフラを全国的規模で提供するため、全銀協ベースでの
「電子債権記録機関の開業を目指しての準備会社がスタートしたということです。
この機関の基本的なスキームとしては、
「手形的利用」「全銀行参加型」「間接アクセス方式」の三点となっています。
このことにより、現在稼動中の「全国銀行データ通信システム」と
類似のスキームのシステムが構築されるということです。
また、このシステムの本格的な稼動により、現在の手形交換所のシステムも
大きく変化するものと期待されます。
【電子債権記録とは】
ところで、電子債権記録とは、電子債権記録機関が保有する電子債権記録原簿に
金銭債権情報を記録をすることにより債権が「発生・譲渡・消滅する」
新しい類型の金銭債権システムです。
電子債権記録の活用により、手形発行時の印紙税コストが節減され、
手形紛失リスクや売掛債権の二重譲渡リスクを回避することが可能となり、
企業の新しい資金決済・調達手段として注目されています。
この電子債権記録に関しては、いくつかの流れがあります。
一つは、個別の金融機関が記録機関を設立し、サービス提供を行う動きです。
(株)三菱東京UFJ銀行が、2009年7月に記録機関として日本電子債権機構(株)を
開業し、電子記録債権の決済・買取サービスの提供を開始しています。
また、三井住友銀行グループもサービスを開始し、
みずほ銀行グループもサービス提供を準備中です。
また、個別の地方銀行でも同様の動きが開始されています。
更には、個別企業が取引の企業との間で電子債権記録による決済システムを
スタートするという形態も構築されつつあります。
これらの動きに対して、全国銀行協会の今回の準備会社の設立は、
大いに意義のあるものと思います。
なぜなら、個別の企業や個別の銀行がばらばらシステムでは、
ユーザーである個別企業にとっては、使い勝手が良いものではありません。
今回の全銀協ベースのシステムが本格化することにより、
このシステムを中核として各種のサブシステムが稼動することが
望ましい形態と思います。
スタートまでには、各種のクリアすべき事項が存在するものと思われます。
また、完全電子化までには、並存期間があり、完全ペーパレス化には、
相応の時間が必要と思われますが、将来的には、日本の金融取引の社会インフラ
として定着化していくことを期待したいものです。
【過去の経緯】
今回の機構が設立されるまでには、「手形の電子」を巡り紆余曲折がありました。
信金中金による「電子手形サービス」システムの試行、
全銀協による手形交換システムの電子決済システムの検討等がありました。
しかしながら、現行の「手形法」の枠組みの中での検討であり、
具体的な実務展開には、発展しませんでした。
今回の全銀ベースのシステム構想が実現化する背景には、
「電子記録債権法」の施行開始が前提として存在し、
個別ばらばらのシステムでは、日本全体としての社会インフラとしての
システムにはなりえないという視点から有意義であると思います。
【個別金融機関の対応方法】
個別金融機関のシステム対応としては、"でんさいネット"では利用者企業による
債権の発行・譲渡に関る申請を取引金融機関経由で行う間接アクセス方式を
採っていることから、債権の決済等で勘定系システム等との連携が必要になります。
即ち、
"でんさいネット"が提供するサービスを利用する金融機関側に
債権情報のデータ授受や決済連携についての"でんさいネット"との接続システム
の開発が必要になります。
金融機関を顧客とするIT企業にとっては、新たな商売の種が発生したということで、
これから具体的な接続システムの開発が開始されることとなります。
【まとめ】
手形の歴史は古く、手形制度は、中世に地中海沿岸の都市で発達した両替商が
発行した手形に始まるとされ、わが国でも鎌倉時代には既に、割符と呼ばれる
為替手形の一種が使われていました。
この長年の商習慣の中で積み重ねされて、「手形に関する法律」により、
守られてきたきた「ペーパーベースの手形」を電子化する訳ですから、
実質的に、「紙から電子記録」に移行するためには、相当の時間が必要かと
思われますが、時代の流れの方向であることには間違いはないものと思います。
商取引に伴う「資金決済手段としての手形」が、「電子債権記録」システムとして、
安定的にスムーズに移行することを期待したいものです。
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