2010.08.19

◆電子債権ネットの準備会社が設立

「電子債権ネット」がいよいよスタート

【はじめに】

古い歴史を持つ、ペーパーベースの「手形」の「電子化」の動きが、
全銀協ベースでスタートすることになりました。

「手形の電子化」に関しては、いろいろな試みや検討が行われてきましたが、
法的な整備の問題、システム移行の採算性の問題等、従来の「商習慣の中で
定着化している手形システム」を電子化するには、各種の紆余曲折がありました。

今回の全銀協ベースの取り組みで、いよいよ「電子債権システム」が
本格化しようとしています。

【電子債権記録機関の設立】

手形の電子化を実現するための全銀協ベースの電子債権記録機関
「でんさいネット」の準備会社が、平成22年6月8 日に設立されました。

平成24年5月の開業を目指しての準備会社のスタートです。

株主は、100%全銀協となっています。


実際にシステムが稼動するのは、二年後ということですが、
全銀協レベルでのシステムが稼動することになります。

既に、株券に関しては、平成21年1月5日より電子がスタートしており、
株券のペーパレス化がスタートしています。

これと同様に「手形のペーパレス化」を推進しようというものです。

手形に代わる新たな支払手段である「電子債権記録」を記録・流通させる
社会インフラを全国的規模で提供するため、全銀協ベースでの
「電子債権記録機関の開業を目指しての準備会社がスタートしたということです。

この機関の基本的なスキームとしては、
「手形的利用」「全銀行参加型」「間接アクセス方式」の三点となっています。

このことにより、現在稼動中の「全国銀行データ通信システム」と
類似のスキームのシステムが構築されるということです。

また、このシステムの本格的な稼動により、現在の手形交換所のシステムも
大きく変化するものと期待されます。

【電子債権記録とは】

ところで、電子債権記録とは、電子債権記録機関が保有する電子債権記録原簿に
金銭債権情報を記録をすることにより債権が「発生・譲渡・消滅する」
新しい類型の金銭債権システムです。

電子債権記録の活用により、手形発行時の印紙税コストが節減され、
手形紛失リスクや売掛債権の二重譲渡リスクを回避することが可能となり、
企業の新しい資金決済・調達手段として注目されています。

この電子債権記録に関しては、いくつかの流れがあります。

一つは、個別の金融機関が記録機関を設立し、サービス提供を行う動きです。

(株)三菱東京UFJ銀行が、2009年7月に記録機関として日本電子債権機構(株)を
開業し、電子記録債権の決済・買取サービスの提供を開始しています。

また、三井住友銀行グループもサービスを開始し、
みずほ銀行グループもサービス提供を準備中です。
また、個別の地方銀行でも同様の動きが開始されています。

更には、個別企業が取引の企業との間で電子債権記録による決済システムを
スタートするという形態も構築されつつあります。

これらの動きに対して、全国銀行協会の今回の準備会社の設立は、
大いに意義のあるものと思います。

なぜなら、個別の企業や個別の銀行がばらばらシステムでは、
ユーザーである個別企業にとっては、使い勝手が良いものではありません。

今回の全銀協ベースのシステムが本格化することにより、
このシステムを中核として各種のサブシステムが稼動することが
望ましい形態と思います。

スタートまでには、各種のクリアすべき事項が存在するものと思われます。

また、完全電子化までには、並存期間があり、完全ペーパレス化には、
相応の時間が必要と思われますが、将来的には、日本の金融取引の社会インフラ
として定着化していくことを期待したいものです。

【過去の経緯】

今回の機構が設立されるまでには、「手形の電子」を巡り紆余曲折がありました。

信金中金による「電子手形サービス」システムの試行、
全銀協による手形交換システムの電子決済システムの検討等がありました。

しかしながら、現行の「手形法」の枠組みの中での検討であり、
具体的な実務展開には、発展しませんでした。

今回の全銀ベースのシステム構想が実現化する背景には、
「電子記録債権法」の施行開始が前提として存在し、
個別ばらばらのシステムでは、日本全体としての社会インフラとしての
システムにはなりえないという視点から有意義であると思います。

【個別金融機関の対応方法】

個別金融機関のシステム対応としては、"でんさいネット"では利用者企業による
債権の発行・譲渡に関る申請を取引金融機関経由で行う間接アクセス方式を
採っていることから、債権の決済等で勘定系システム等との連携が必要になります。

即ち、
"でんさいネット"が提供するサービスを利用する金融機関側に
債権情報のデータ授受や決済連携についての"でんさいネット"との接続システム
の開発が必要になります。

金融機関を顧客とするIT企業にとっては、新たな商売の種が発生したということで、
これから具体的な接続システムの開発が開始されることとなります。

【まとめ】

手形の歴史は古く、手形制度は、中世に地中海沿岸の都市で発達した両替商が
発行した手形に始まるとされ、わが国でも鎌倉時代には既に、割符と呼ばれる
為替手形の一種が使われていました。

この長年の商習慣の中で積み重ねされて、「手形に関する法律」により、
守られてきたきた「ペーパーベースの手形」を電子化する訳ですから、
実質的に、「紙から電子記録」に移行するためには、相当の時間が必要かと
思われますが、時代の流れの方向であることには間違いはないものと思います。

商取引に伴う「資金決済手段としての手形」が、「電子債権記録」システムとして、
安定的にスムーズに移行することを期待したいものです。




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◆電子メール等の保存期限について



280通の電子メール削除で逮捕

【はじめに】

日本振興銀行の木村前会長らの経営幹部が銀行法違反(検査忌避)容疑で
逮捕されるというショッキングな事件が発生しました。

金融庁の立ち入り検査を受けた際に、取引経緯に関する電子メールの記録を
280通削除して検査を妨害したとされる事件です。

竹中平蔵金融担当相(当時)のブレーンとして金融庁顧問も務めた木村前会長
の刑事責任が追及される見通しとなったというものです。

【電子メールの保存期限違反】

この事件で思い出すのは、今から十年ほど前に、米国の証券会社が、
米証券取引委員会(SEC) が、ウォール街の証券会社5社に総額825万ドルを罰金として
支払うよう命じたという報道を記憶の方もいらっしゃると思います。

業務関連の電子メールを、義務付けられている期間、保存していなかったために
罰金を科せられたというということでした。

SECによると、罰金を科せられた5社は、自社の証券取引、仲介、売買業務に関する
電子メールなどの社内メモを「3年間保存する、あるいは利用可能な場所に2年間保存する」
という規則に違反したということでした。

この米国の事件を受けて、メールの長期保存のファイルシステムのセールスが
活発化したのを覚えています。

【ITファイルの保存期限】

電子メールに限らず、ITシステムのファイルの保存期限の問題は、
大きなテーマとなります。

基本的には、通常の文書の保存期限に準じる運用となりますが、
文書の重要度と商法等の法律等で定められたルールに従って
保存されることになっています。

このルールに違反した場合やファイルの意図的な削除や改ざんを行った場合には、
罪に問われることになるのです。

【まとめ】

今回の事件は、電子メールの削除による取引経緯に関しての証拠隠滅による、
金融庁の検査忌避の容疑で逮捕者がでるというショッキングな事件でした。

IT化が進む中で、金融取引の折衝経緯を電子メールでやりとりすることが、
定型化していることを物語るものです。

金融取引のIT化の進展に伴い、取引経緯や記録ファイルの保存期限の設定や
保存保管の方法と改ざん防止に関してのルールを明確化すると同時に、
システムを支援するハードやソフトが各種販売されています。

これを機会に、自社のシステムの再点検が必要ということです。

今回のように、経営のトップが指示して、電子メールの削除やITファイルの改ざんを
運用責任者に指示した場合でもファイル自体は、永久的には削除されないシステムを
導入することも肝要ということです。

今回の事件は、ITシステムの広義のセキュリティー対策の重要性を
再認識することになりました。




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2010.06.24

◆企業IT動向調査から金融業界の動向を探る

企業IT動向調査から金融業界の動向を探る
(2009年度の調査結果)

【はじめに】

米国発のサブプライムローンを発端として、世界経済は低迷してきましたが、
上海万博の開催を刺激として、中国経済の伸張やエコポイントによる内需
拡大等で、日本経済にも上向きの傾向が感じられるようになってきました。

と思っていた矢先に、ギリシャの国家財政悪化から、今度は、ヨーロッパ発
の世界経済の不安定化が発生してきました。
上向こうとしていた景気回復に冷や水を掛けるような現象が発生してしまい
ました。

この影響がどの程度のものかは、現時点では不透明な状況ですが、このよう
な先行きの読めない中で、企業のIT予算も削減傾向が続いており、IT業
界は活性化が期待できない状況にあります。

そんな中で、日本情報システム・ユーザー協会から
「企業IT動向調査報告」が公表されています。

今回は、この中から、金融業界に関連して、興味ある部分をピックアップ
してみたいと思います。

【調査の概要】

この調査は、日本企業のITに関しての動向を知る上で興味深いものが
あります。

今回の調査の重点ポイントは、

1)経営環境の変化に対応したIT活用策、
2)システムの信頼性・安定性の確保、

の視点からの調査となっています。

具体的には、
1)経営環境の悪化から、IT投資予算は、引き続き抑制の傾向が続いて
いますが、IT技術の進歩傾向は、継続しており、「仮想化技術」
「SaaS」「クラウドコンピューティング」などの新たな技術が
浸透しつつあります。
これらをいかにうまく活用していくかがテーマになります。

また、
2)ITシステムが社会の中に浸透するに従い、社会基盤の一部として
機能しています。従って、システムの障害が、社会生活に与える影響が
大きくなっています。
システムの障害がマスコミで大きく取り上げられるようになっています。
社会システムとして便利に利活用され、定着化してくるに従い、
システムの信頼性と安定性のニーズはますます増大してくるのは
当然のことです。この信頼性と安定性の現状はどうなっているのかが
調査の対象となっています。

【調査の結果から】

この調査結果から特に金融業界の動向をピックアップしてみました。

1)IT投資に関しては、金融業界の開発費も急減速しています。
金融業界の開発費と保守運用費の比率は、概ね、59:41の比率となって
おり、この開発費の落ち込みが大きかったものの、徐々に回復の兆しも
見えてきているようですが、抑制傾向であることには、変化がないようです。
大規模プロジェクトが一段落したのも影響しているかと思われます。

2)IT投資で解決したい課題と中長期的な経営課題としては、
「ビジネスプロセスの改革」「グローバル化への対応」
「企業間の情報連携」「ビジネスモデルの変革」が、
近年の定番となっていますが、昨今の時代背景から
「経営の透明性の確保(内部統制、システム監査への対応)」
「企業としての社会的責任の履行(セキュリティ確保、個人情報保護等)」
が、重視される傾向が浮き彫りになってきているようです。

3)情報システム障害とその原因としては、事業中断レベルの障害発生件数
が年間0件」の企業の割合が3/4と情報システムの障害対策が各企業に
浸透してきているようです。
この中で、興味深い試算がなされていました。
保守運用費(除く・ソフトウェア費用)と障害件数の関係で、
「事業中断に至るシステム障害」は、年間保守運用12億円当たり1件発生
という数字になっています。
この数字は、全業種の数字なので金融業界にすぐには当てはまるものでは
ありませんが、大変興味深い試算結果と思います。
自社の予算と比較してみていただくことにより、自社システムとの比較して
いただくことも可能かと思います。

4)金融機関の情報システムに関しては、調査の結果から、
高品質システムとの高い評価を得ています。
1/3の企業が「無停止」を実現しており、残りの企業でも、
99.999%以上の稼動実績となっています。
これは、金融機関のシステムが社会基盤のひとつとなっており、
社会的責任の重要性に対応したもので当然の結果ということでしょう。

5)日本の企業の基幹の情報システムの障害による月間停止時間は、
1.7時間と北米の大企業の月間停止時間14.7時間と信頼性が
格段に高いということです。
このことは、日本人のトラブルに関しての気質にも影響があるもののとは
思いますが、反面では、過剰投資にならないように予算管理の厳正化も
求められるのも現実です。

6)重要インフラ情報システムの信頼性については、
「重要インフラ事業者」として、
「情報通信、金融、航空、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス、医療、
水道、物流」の10業種の中でも、金融業が他業種と比較しても高水準
であり、過半数の企業が年間の障害による停止時間5分以下
(稼働率99.999%以上)を実現しています。
このことは、最近マスコミで、金融機関のシステム障害の報道が
少なくなっているとの実感と一致しています。

7)災害対策に関しては、本番機とバックアップマシンを別センターで
稼動させている企業は全体では二割、大企業では1/4になっていますが、
「金融業」では、45%が複数センターで稼動させています。
金融機関では常識と考えていることが、一般の企業では、浸透していない
ということです。
地震等の大災害時に課題を残しているというのが現状のようです。

8)情報システムの信頼性向上に関する悩みとしては、
「要員の不足」が首位を占めているものの、「開発時のテスト不足」
「企画・設計段階のレビュー不足」「ベンダーのサポート不足」等
の原因は、低減傾向にあり、システムの信頼性確保への意識が浸透して
きているようです。


【まとめ】

今回は、企業のIT動向調査をベースに金融機関のITシステムの特徴を
ピックアップしてみました。

金融機関のIT化は、長い歴史があり、技術革新の進歩に合わせて、
時代ニーズに応じて各種のサービスを提供してきています。

この過程で、数多くのノウハウの蓄積があります。

このノウハウの蓄積が、ユーザー側、システムベンダー側に蓄積され、
信頼性の高い金融情報システムが情報社会のインフラとして機能しています。

このことは、誇るべき事実と思います。

しかしながら、これらのノウハウが次世代に順調に継承されているのか
どうかについては、疑問と思われることが多いように思います。

システムにも関与する要員にも世代交代は避けては通れない現実です。

次世代を担う要員を今から長期計画で育成していくことの重要性を痛感する
次第です。

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