■ATM戦略の変遷(その1)
☆ATM戦略の変遷(その1)
■はじめに
さて、
温故知新技術編の第2号に何をテーマとして取り上げるべきか悩みました。
いきなり、バンキングアンライン開発の歴史からでは面白くありません。
スタートからこれでは先が思いやられます。
まず、
身近に普及しているATMの開発の歴史を振り返ってみたいと思います。
ATMは今では当たり前の身近な銀行の機器となっています。
ここまでくるには、技術の進歩とお客様のニーズに対応してきた
銀行の機器開発担当者の苦労と機器製造メーカの苦労がありました。
この開発の経緯等を思い出しつつ書いてみたいと思います。
■ATM戦略の新展開
今では、ATMは、金融機関の便利な省力機器として浸透してきました。
ATM(Automatic Teller Machine)は、銀行の店頭受付係(テラー)の
業務を自動化し、省力化するための機器として開発されたものです。
そして、金融機関相互のATMの乗り入れが可能となり、
ネットワークの広がりと機能拡張により社会の基盤システムとして
普及してきました。
更に共同の「統合ATMシステム」が、本格稼働(2004.5)すれば、
取引行以外のATMでも、24時間稼働、入出金可能、振込口座事前確認等
のサービスも可能になります。
ATMは、金融機関の当たり前の機器として
一般のお客様にも広く普及してきています。
この金融機関のATM戦略もあらたな局面を迎えつつあります。
この背景には、新札発券に伴い各金融機関はATM機器改造をせざるを得ません。
新札発券により、現金を扱う各種の金融関連の機器の改造が必要となります。
新券には、偽造防止の各種の仕組みが組み込まれています。
http://www.mof.go.jp/jouhou/sonota/sonota.htm#aa
新札や新硬貨の発行があれば、駅の自動切符販売機や飲料水等の自動販売機の
改造の必要があります。
この機器改造に投資により、日本経済の景気向上の一助になるとの説もあります。
金融機関の出費の拡大は相当な額になります。
銀行設置の汎用ATMの一台あたりの改造費は、百五十万円前後と言われ、
これに設置台数を掛けた金額が投資金額になります。
不良債権処理で利益の大部分を償却処理に充てている金融機関にとっては
大きな負担となっています。
一方、機器を開発しているメーカーは特需で株価も上昇しました。
ただし、特需後の需要減少を見越して、つい最近も日立とオムロンの事業再編が
発表されています。
このようにATM等の金融機関の機器は普及台数が増えてきたために、
新札発行とかのインパクトに関して対応していくということは大変な痛みも
伴います。
そこで、ATM改造のコスト負担を契機としてATM戦略の見直しの機運が
高まってきています。
コンビニエンスストアーへのATM設置台数の拡大により、
従来の金融機関が設置してきた金融機関のATMとコンビニに設置してある
ATMとの棲み分けも必要となってきています。
■旧システムから新システムへの移行負担
また、よくご存知の金融機関が発行しているプラスティクのキャッシュカードも
ICカード化への転換の準備が始まっています。
このICカード化に伴うATM改造も大変な費用負担になります。
大量に発行されているキャッシュカードをICカードに切り替える作業は
大事業となります。
発行済みのキャッシュカードは、わが国の成人の大人ひとりあたりで、
2-3枚と言われています。
このうちのどの程度が実際に使われているかは不明ですが、
確かに、2-3枚は財布に入っています。
切り替え用のICカードの新規発行コストは当然のことですが、
切り替えるための移行負荷のコスト負担は莫大な金額になります。
しかも、一斉に切り替えることは物理的にも不可能なために、
しばらくは、現行のキャッシュカードとICカードとの並存期間が必要です。
システムは当然のことながら二重化することになります。
新方式のシステムを採用するということは、
常に現状のシステムからの移行の負担が伴います。
この点が実務として大変な作業と期間・費用を必要とします。
折角、新方式の良質なシステムが開発されても世のなかに普及するのには
相当の時間と費用がかかるということは、ご承知のとおりです。
身近な例として、地上TVのデジタル化に関しても、
簡単には移行できません。コストと相当の期間を必要とします。
TVの買い替えが完全に終わるまでは、
二重の電波で放送を続けていく必要があります。
また、旧型TVにアダプターをつけて、
新方式のデジタルTVへの対応方法もつなぎとして
必要になってくるかも知れません。
このことは、今後採り上げるいくつかのテーマの中で、
旧方式から新方式には簡単に切り替えることができないという
現実の事情が存在するということの実例のひとつということになります。
■官業の民業圧迫
今では、郵政公社の貯金の入出金処理にもATMが
多数設置されるようになって来ました。
自社のネットワークだけではなく、クレジット会社との提携や、
一部の金融機関との提携を拡大しています。
ご存知とは、思いますが、郵政公社と民間金融機関との間には、
古くからの業際問題の論争があります。
それは、官による民業圧迫というテーマです。
郵政公社の民営化に関しては、政治問題化していますが、
古くからの官の民業圧迫の問題が存在しているということです。
論争の根底には競争の公平化の問題があります。
官ゆえの特別優遇措置があり、競争が正当に行われていないからです。
このために、折角のATMのネットワークも一部の銀行を除いては、
相互乗り入れが実現していません。
この論争に相互乗り入れが実現しない裏事情も存在しているのです。
■新ATM戦略の方向
以上のように、ATMを巡る基盤が時代の流れの中で、
大きく変化してきています。
省力機器として開発されて金融機関の省力効果に多大の貢献を
果たしてきたATM機器を単なる省力機器という視点だけでなく、
戦略・戦術機器として見直すべきであるとの機運が高まってきています。
既に、省力効果を十分に発揮している機器を更新する場合には、
投資対効果の計算は難しい問題です。
投資しても、これに見合う効果を得ることができないために、
できるだけ既存の機器の延命化を図りたいのが経営の意思です。
多大の投資が伴うわけですから経営としても
多大の投資に対しての効果の見返りを要求するのは当然のことです。
このような事情のもとで、都市銀行のビッグ4のATM戦略が新たな戦略を
明確化する動きを見せています。
■UFJ銀行が広範囲の店で、ATMの24時間稼動を開始しました。
■三井住友銀行が時代を見据えた戦略として、若手マーケットに特化した
無通帳を前提とした預金口座の販売を開始しました。
両行の新ATM戦略の現われということになります。
なぜ、これらのことが、新戦略なのかは、
一般のお客様にはすぐには理解できないのではと思います。
そこで、次回はこの問題の裏事情について説明してみたいと思います。
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