■バンキングオンラインの幕開け
■バンキングオンラインの幕開け
銀行のオンライン・リアルタイム・システムを日本で始めて稼働させた
のは当時の三井銀行でした。
昭和40年5月に普通預金業務のオンライン・リアルタイム・システム
が稼働を開始しました。
これが、日本のバンキングシステムの幕開けということになります。
三井銀行では、銀行業務の事務合理化に関しては、昭和35年ごろから
本格的な機械化の研究が開始されています。
いろいろな方式が検討され、オフライン方式、オンライン方式等が検討
されましたが、なかなか結論がでなかったようです。
当時の電々公社は、電話回線によるデータ伝送を認めていませんでした。
このことも、リアルタイムシステムの実現に対する懸念でもありました。
また、
当時のコンピュータは高価であり、投資効果に対する懸念もありました。
このような状況の中で、昭和39年の東京オリンピックの開催計画が、
日本のデータ通信システムに大きなインパクトを与えることになります。
東京オリンピックで、日本IBMが競技速報のオンライン・
リアルタイム・システムを導入する計画を発表したのです。
当然のことながら、競技場に設置された端末からデータを収集する必要が
あり、電話回線を利用してデータ伝送を行う必要がありました。
これを契機として、電々公社も電話回線によるデータ伝送を認可する
ことになったのです。
当時の記録によると日本IBMが無償で東京オリンピックの競技20種目、
全選手5,712人に及ぶ膨大なデータ処理である公式競技速報システムを
成功させたとあります。
このシステムの成功が三井銀行にオンライシステムの開発を決断させ、
銀行システムへの電話回線によるデータ伝送システムの実現に結びついた
ということです。
東京オリンピックがバンキングオンラインの開発と密接な関係が
あったということです。
最初の三井銀行のオンラインシステムは、東京オリンピックで利用した
コンピュータと同じタイプのものを利用しています。
中央演算装置には、IBM1410(主記憶容量60K)と
1440(主記憶装置16K)で各々二台ずつの構成でした。
この時代の「K」という単位は、文字数を表現しています。
単純に現在のKBと同一と考えても、60KB、16KBのマシンは、
現在のパソコンが、128MB、256MBが標準になっているのに
比較すれば、60KB/128000KB=0.00047という
メモリーサイズということになります。
現在のパソコンの二千分の一より小さいサイズのメモリーだったのです。
パソコンと比較しても比較にならないほどのコンピュータでオンライン・
バンキングシステムが開始されたということです。
こう考えると40年間にコンピュータ技術の進歩は目覚しいものが
あります。
普通預金の元帳には、2MBの1311型のディスクパックを使っています。
現在のノートパソコンの最低ディスク容量でも20GB程度ですから
一万分の一の容量だったわけです。
システム価格も億単位でしたので、技術進歩による価格の低下も隔世の感が
あります。
その後、このシステムは、IBM360モデル40型256KBに更新され、
昭和43年になって首都圏全店がオンライン化され、昭和43年4月に
大阪支店の移行が行われ、しばらくして全店オンラインが完成しています。
■銀行での初仕事はシミュレーション解析
この昭和43年の4月に小生が銀行に就職したわけで、普通預金の
全店オンライン完成の時期以降バンキングシステムに関わることに
なっていったということです。
これ以降、総合オンラインと呼ぶ、全店全科目オンラインシステム開発が
開始され、第二次、第三次オンラインと機能拡張がなされていきます。
当時の小生の記憶によるとIBM360/40は、全店の普通預金
オンラインを1台で処理する能力がなく、2台のシステムを回線で
つないだシステムで稼働していました。
いわゆる、2台で処理能力を分散処理させる、ロードシェアシステムで
稼働させていたのです。
この2台のロードシェアシステムで、問題となったのが、
いわゆる「他店取引(ネット取引)」でした。
大阪地区の支店で、東京の支店に口座をお持ちのお客様が預金の取引を
なさる場合に、大阪地区を処理するシステムから東京地区を処理するシステム
にデータを渡し、処理結果を受け取るという処理が必要です。
この場合に、2つのシステムのデータの受け渡しのボリュームが多くなると
処理の待ち行列ができるため、応答時間が長くなり、タイムアウトという
処理不能の状況が発生します。
余談ですが、昨年のみずほ銀行のトラブルにもこのタイムアウトの現象が
発生して、システムが正常に稼働しないという障害が発生していますので、
このシステム間のやり取りの処理は旧くて新しい問題なのです。
当時もラッシュテストという大量のデータの打ち込みテストで判明したことです。
当時の通信回線は2400BPSで回線がネックということになったのです。
ここで、問題になったのが、「待ち行列問題」というテーマでした。
この問題を解決するのに「待ち行列理論」というのがあります。
現実の問題解決策として、スパーでのレジの数をいくつ置くべきかとか、
ビルのエレベータを何基設置すべきか等の問題を解決するための理論
です。小生の大学の卒論のテーマで得意分野ということでした。
そこで、小生の初仕事がこの問題を解析することでした。
簡単なシミュレーションモデル(コンピュータでの模擬モデルを作って解析)
により、データ発生パターン、データ量等をいくつか設定して、この場合の
待ち時間の推定を行い、実務上は問題ないということを実証したことを
思い出します。
その後、しばらくは、いろんな問題をシミュレーション解析する仕事を
していました。
いわゆる、バンキング分野のオペレーションズリサーチ(ORと略)とか
マネジメントサイエンス(MSと略)とか言われる分野の仕事でした。
初期のコンピュータシステムは、このようなシステムネックがあちこちに
あり、これらのシステムネックを解消するために各種の工夫を行っていた
ことを思い出します。
この頃のバンキングシステムでの営業店の端末とセンターを結びつける
データ通信回線は、1200BPSでした。
また、商用で利用できるデータ通信の最高速度は、2400BPS
だったと記憶しています。
以上のように、バンキングオンラインを支えている技術の一つが、
データ通信回線ということになります。
しかしながら、電々公社の厳密な審査があり、データ通信回線を
自由に利用することができませんでした。
データ通信回線の接続システムの自由化やデータ通信利用の開放等
の課題は、この頃の電々公社の厳密な審査基準による規制から発生
した問題だったのです。
次回は、この通信回線自由化の問題とこれにより、何が変わって
いったのかを採り上げたいと思います。
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