■銀行合併と人事問題
■合併に伴う人事の問題
銀行に限らず企業合併に伴うトラブルは数多く発生します。
大組織になれば、同一企業ですら学閥や派閥等が潜在的に存在します。
企業風土の異なる企業が合併するわけですから問題が発生しないはずが
ありません。合併で発生するトラブルの根本的な原因は人事の問題です。
人事の問題では、人事制度とポストの問題を採り上げたいと思います。
直接、システムには関係のないテーマですが、システム統合に関与するのは
人間です。ここにも人事の問題がしこりを残す原因になります。
これがシステム統合のトラブルに発展した事例も存在するからです。
■人事制度上の問題
まず合併時の人事で問題になるのが給与水準の調整です。
日本企業の人事には年功序列的な資格制度があり、経験と能力により資格が
決定されこれに対応する給与が決定されるというのが基本となっています。
この制度は、個別企業によりいろんなバリエーションがあります。
この制度の違いと運用方法は個別企業独自のものです。
大学を卒業した同期が何年か後には資格の差が生じるのは当然のことです。
社長のポストはひとつでありこのポストを競い合うというのが、
一般的なサラリーマンの世界での競争ということになります。
同一企業の場合には、それなりのルールに従い表面的には納得のいく形での
公平性が保たれ順次選抜が行われていきます。
しかし、企業が異なると過去の経歴の評価の仕方も異なります。
若いうちから選抜していく方式の企業とある年齢までは表面的には選抜せず、
管理職段階で選抜していく方式の企業があります。
この選抜方式は、人材の育成方針とか入社してくる人材の質にもよります。
この差異をどのように調整していくかが合併人事の問題となります。
合併当初は暫定的に両社の制度を統合して暫定制度をつくり、合併後の実績に
より徐々に再調整するということになります。
一般的には給与水準は高い方に調整する場合が多いため人件費の増加に
つながります。合併以前に昇格調整を行う姑息な企業も現れます。
そもそも、企業が何のために合併するかです。
合併理由は様々です。好景気の場合と不況時期の合併とは条件も異なります。
一般的には、対等で大組織が合併する場合の目的は、規模の拡大による
マーケットの拡大と経営の効率化による収益力強化にあります。
当然のことながら、人員・組織のスリム化が大きな課題になります。
重複する部署を統合化して効率化する必要があります。
具体的な例え話として説明します。
単純な算数のモデルの問題として説明します。
A企業は本部が15部で200人、支店が100支店で2000人であったと
します。
B企業は本部が10部で150人、支店が120支店で2400人と仮定します。
さて、このA企業とB企業が合併するとどうなるのでしょうか。
本部が25部で350人、支店が220支店で4400人となります。
当然この中には重複している本部もあり、支店も隣接しており重複しています。
ここで、本部は10部で300人、支店は200支店で4000人で十分という
ことになれば、本部の部長が15人不要になります。本部要員も50人不要です。
支店は20支店廃止になります。支店要員も400人不要になります。
日本の企業の場合には、この余剰人員を即刻解雇することはできません。
したがって、当面は余剰人員を抱え込む人事になります。
業容が拡大することなく、この余剰人員をいつまでも温存していると
企業合併は失敗ということになります。
上記のモデルケースの場合では、本部では、15人の部長を副部長として格下げ
せざるを得ません。支店長も20人が不要になります。
この事象は、次長、課長等の呼称の人々についても同様ですし、社長、専務、
常務等の役員クラスの人事に関しても全く同様となります。
この調整をどう行うかということになります。
この過程で人事上のトラブルが発生するということは容易に想像できること
と思います。ポスト争いがはじまります。
誰を部長として残し、誰を副部長に格下げするのか。
誰を子会社や関連会社に出向させるのか。
誰に退職勧告を行うのか。
暫定的に副部長を2名以上設置するのか。
等々です。
そして、「たすきがけ人事」という奇妙な人事発令が行われます。
上記のモデルの例ではA企業の部長を5人、B企業の部長を5人発令します。
そして、部長がA企業出身ならば、副部長はB企業出身の発令が行われます。
部長交代の時にはB企業の副部長が部長に昇格し、A企業の副部長が発令
されます。これにより表面的な公平性を保つことになります。
実際には、こんな単純な形にはなりませんがバランス人事が基本となります。
この方式でうまくいく場合はよいのですが、必ずしも適材適所の人事では
ありえません。ここに派閥と足の引っ張り合いが起こりうるのです。
合併の人事により企業経営が停滞する原因は、外向きの戦いよりも
内向きの戦いの方が優先される場合があるからです。
内部混乱を避けるために「協調と融和」ということばが使われます。
経営戦略に関して議論を戦わせていくと対立する戦略の選択を必要とする場合
があります。
どちらか一方の案を採用するか、両者の妥協案を作成するかという事態が
発生します。
これがしこりになると考えるトップマネジメントが存在すると企業内での
真剣な議論が行われなくなり両案の妥協案ばかりが選択されはじめます。
このような合併の場合には、企業業績は低迷化の方向に向かいます。
中途半端な妥協案の連続は合併失敗のケースにつながります。
合併でうまくいくケースは、力のバランスが圧倒的に異なる場合のように
思います。是々非々で公平な判断を下せる経営者が不可欠ということになります。
強者が弱者を利用していくという度量がある場合は旨くいくようです。
結論として、合併の人事問題は企業風土の融合の根本問題です。
新たな企業風土が出来上がるには相当の時間が必要です。
人事のしこりを消し去るのに何十年という期間が必要なようです。
この長い期間に自然淘汰が行われていくのです。
競争の激しい時代に生き残る企業には、公平かつ豪腕の経営者が必要と思います。
決断力のない経営力不足の経営者の企業は衰退するのみです。
このことは、合併企業だけの問題ではありませんが、合併企業には、
顕著な現象として表れます。経営の急速な衰退につながります。
数多くの企業合併の事例が存在しますが、これらの合併企業の10年後、
20年後はどうなっているのでしょうか。
当事者は大変とは思いますが、部外者にとっては結果はそれまでのお楽しみ
ということでしょう。
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