■銀行の合併システムに関して
前回に引き続き銀行合併に伴う諸問題について書いていきます。
今回はシステム統合に関わる諸問題です。
このテーマに関しましては、大きなシステム投資を伴うために、
メーカー決定の過程で政治的な圧力がかかってくる分野です。
生々しいことがいろいろありますが、当事者に迷惑がかかるといけませんので
細部に触れないことにします。
■システムの統合にはコストがかかります。
前回は事務手続きに関しての合併上の諸問題に触れました。
事務手続き分野でも印刷業者やいろんな利害が絡む取引上の問題が
発生しますが、金額的にはたいしたことはありません。
相対的な比較であって絶対額では勿論億単位です。
しかし、大型銀行のシステム統合には100億単位の投資と将来の
投資に関わる未知の売り上げに関しての問題が発生します。
従って、システム統合には複雑な問題が発生します。
システムの機能は事務手続き切り離しては考えられないのですが
システム統合には、それ以外の大きな問題が発生します。
まず、センターシステムのコンピュータのメーカーの統一、営業店の端末の
メーカー機種の統一が問題になります。
同一メーカーでも当然OSやコントロールプログラム、アプリケーション
プログラム、等々のすべてが一致するということはありえません。
これをどちらか一方に合わせる場合でも両行の業務処理機能が異なる場合には、
新規の機能を追加開発する必要があります。
■お客様のシステムへも影響があります。
行内だけに影響するシステムの場合には割り切ればよい問題ですが、
お客様のシステムとデータ交換している場合には、ファイルレイアウト、
使用コード体系等の相違により移行システムが大きな問題になります。
お客様との詳細な打ち合わせが必要になります。
顕著な事例としては、銀行が合併すると銀行名や支店名が変更になります。
これに伴いコンピュータ処理に使う、銀行コード、店番号コード、
場合によっては一部の口座番号の変更も必要になります。
口座番号には入力ミスを発見できるようにチエックデジットという一桁の数字を
組み込んであります。これは、店番号、科目コード、口座番号のシリアル番号を
ある演算式により算出して0-9の数字を決定します。この数字が合致しないと
エラーとして扱うのがチェックデジットの役割です。この算出論理が異なると
口座番号の変更を伴ったりコンピュータシステムでの口座番号読み替えの
複雑な対応が必要になります。
端末のメーカーや仕様が異なると、通帳やキャッシュカード、小切手、手形、各種の
伝票や帳票の設計変更やシステム対応の必要性があります。
細かい話ですが、例えば、ATMで通帳に印字する場合に、どのページのどの行
から印字を始めるかを検知しなければなりません。この情報を得る方法としては、
いくつかの方式があります。通帳の磁気ストライプに記憶させておく方式で
あってもお客様が差し入れたページが正当か、打ち出す行数が正当か、
これを光学的に検知する必要があります。
このために通帳のページを判断するバーコードが印刷されています。
また、行を判断する論理もATMに組み込まれています。
この方式が銀行によってバラバラということです。
今年中に、みずほ銀行のシステムがようやく統合されますが、既にご存知の
ように旧富士銀行の通帳が使えなくなります。旧第一勧銀の通帳に合わせる
ということだろうと思います。旧富士銀行のお客様の通帳をすべて入れ替える
ということがどれほどの手間とコストがかかることか想像できますか。
こんなところからも合併のシステム統合コストが相当なものであるということが
推定できると思われます。
■センターの統合システム決定バトル
センターシステムのメーカーが異なる場合には、メーカーは勿論のこと、
行内でもメーカー支持者間での激しいバトルが発生します。
機能の比較やシステムの良否が明確になっても最終的には、政治決着という
場合が多いのです。
トップダウンで決定を迫られる課題となります。
バンキングのセンターシステムはコンピュータメーカーのブランドイメージに
かかわるだけではなく、将来の収益に多大な影響を与えるからです。
ありとあらゆるチャネルから政治的・経済的な圧力がかかってきます。
従って、初期の段階で経営トップによる合意がなされている場合が多いという
ことになります。
銀行には数多くのコンピュータ化されたサブシステムが存在します。
これらのシステムにおいてもそれそれのメーカーの攻防が行われます。
初期の段階で整理統合していくことがCIOの重要な仕事となります。
この決定を遅らせると後々にしこりを残すことになります。
メーカーのSEも人間ですので、不採用の通知を受けた側の協力度合いと
採用の通知を受けた側の協力度合いに差が出てくるのは当然のことです。
決定のタイミングと決定理由の透明性が問われることになります。
メーカー選定の巧拙がシステムトラブルの原因に結びつく可能性が大である
ということにもなります。
■システム機能の相違の調整方法
システムの機能の相違があっても強制的にどちらかのシステムに合わせてしまう
というのが単純な解決法です。
合併の規模の差が大きい場合には大が小を飲み込んでしまえば決着がつきます。
しかし、対等合併の場合には個別テーマごとに妥協点を見出すための時間が
浪費されていきます。
そして、統合用の新システムは両行のシステム機能を統合するために複雑な対応を
要求されます。
システム統合のための開発投資額がかさんでいきます。
合併しても合併効果がなかなか現れないのは、システムや事務の統合に相応の投資
とシステム開発負荷が続くからです。
後ろ向きとは言いませんがどちらかというと足ぶみ状態がつづき、前向きな新規の
プロジェクトの開発は凍結されます。
合併により新規のビジネスへの対応が他行比遅れることになります。
従ってシステムの統合はできるだけ急ぐ必要があるのです。
ここで問題が起こります。
経営は早急にシステムを統一し移行することを要求します。
移行システムの期間を短くするとシステムのテストが十分でなく、
システムトラブルに結びつく可能性が高くなります。
このスケジュールとタイミングの見極めが非常に重要になります。
みずほ銀行のシステム障害はマスコミで大々的に採り上げられ、国会の場での
質問にまで発展しました。
しかし、銀行のシステム統合ではマスコミに採り上げられない大小のトラブルが
数多く発生しているというのも事実です。
システム統合は大変苦労の多い仕事であるということです。
■ その他
その他システムを巡る諸問題は、営業店の事務処理を後方で支えている
大きな事務処理の工場である「集中事務センター」の事務処理体制にも影響を
与えます。
銀行のシステムは関連子会社のシステムとも密接な関係で運用されている
ためにこれらのシステムの統合も必要になります。
列挙していけばきりがないほど、ありとあらゆるところに影響が
でてくるのが銀行の合併に伴うシステムへのインパクトです。
システム統合にまつわる問題は数限りなく存在しますが、
長くなりすぎますのでこの辺で後は割愛させていただきます。
次回は合併に伴う人事問題について触れてみたいと思います。
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