■為替電信交換システム
■はじめに
データ通信回線に関して書き始めましたが、小生自身は、
通信技術に関して専門的に勉強したわけではありませんので、
技術的にはよく理解していないことが多いと思います。
ユーザーとしての立場からの経験の一部をお話しているに過ぎません。
この点に関しては、予めご了承ください。
■昭和40年代
◇為替電信交換システムとの出会い
昭和43年に銀行に就職が決まり、はじめて支店研修の現場で
接触したシステムのひとつが、為替の電信交換システムでした。
今は、見ることはないものですが、2-3センチ幅の紙テープに、
穴を開けてデータを記録する方式がありました。
読者のなかでも知っていらっしゃる方は少ないかもしれません。
昔は、コンピュータにデータやプログラムを入力する場合には、
この紙テープに穴をあける方式か、紙製のカードに穴をあける
パンチカード方式と呼ばれていたものを使っていました。
当時の為替電信交換システムの為替送金データは、
この紙テープに穴をあける方式で、紙テープベースで
電文データの送受信を行っていました。
このときに使われていた通信回線は、
50ボーの専用電信網の回線でした。
【補足説明】この部分はやや専門的になりますので
興味のない方は読み飛ばしてください。
ボーとは、データの伝送速度を示す基本単位で、
フランス人の電信技術者であるJ.M.E. Baudotの名前に因んでいます。
モデムなどのデータ通信デバイスでは、キャリア波と呼ばれる基準波
の状態をさまざまに変化(この操作は「変調」と呼ばれます)させ、
遠隔の相手にビット情報を伝送します。
ボーとは、このキャリア波が1秒間に変化する回数
を示す単位のことです。
実際のデータ通信速度を表わす単位はBPS(bits per second)です。
キャリア波に対し、複数の変調処理を組み合わせることで、
キャリア波の1周期分の時間で2値以上の状態を作ることも可能です。
この場合には、baudレートの倍のbps値でデータを伝送できます。
従って、ボーの単位とBPSの単位は一致しません。
事実、初期の1200bpsのモデムは、
600baudで1200bpsのデータ伝送速度を実現していました。
【ボーの説明はここまで】
為替という言葉がお解りにならない方のために簡単に説明しておきます。
為替業務とは、
「隔地者間における金銭債権債務を直接現金の輸送によらずに
資金決済する方法」です。
この仕組みも説明すると複雑になるので、
簡単に、皆さんが資金を他人の預金口座に振込む処理を行う
ことが代表的な事例という程度にとどめておきます。
現在では、コンビニのATMでも簡単に資金の振込処理が
できますが、昔は大変だったのです。
■為替電信交換システムによる振込処理
典型的な銀行店舗での電信為替振込の事務処理の形態を説明します。
まず、お客様は、為替の振込伝票に振込先の銀行、支店名、
振込先の口座番号、受取人名と振込人名、振込金額等を記入し、
窓口係に振込金額と振込手数料を添えて申し込みます。
内容点検の後に、振込手数料は、振込金額によりますが、
印紙を貼った手数料の領収書と振込依頼受付書を受け取ります。
これが、振込を依頼して、銀行に受領されたという証拠の書類となります。
ここまでが、お客様との取引です。
次に、カウンターの中の為替係の仕事になります。
同一銀行の他の支店への振込(これを本支店振込と言います)か、
他の銀行宛の振込かを区別します
お客様から依頼された振込伝票に書いてある、
振込先銀行が自行の場合には、支店名から支店番号を索引して、
この支店宛の為替振込電文データを作成します。
当時の電文データ作成の方法は、為替専用の端末で、紙テープに穴をあけ
振込電文の紙テープデータと電信為替振込印字の伝票をプリントすることでした。
そして、この紙テープデータと為替振込電文記録とお客様ご依頼の伝票を
セットにして、精査係により、データ入力が間違っていないかの点検を
受けます。
振込金額の大きなもの(金額の設定は銀行独自に設定されています)に
関しては、係長等の役付き者の承認点検を必要としていました。
精査終了、役席者承認後の紙テープは、紙テープリーダーに読み取らせて、
専用電信回線を経由して為替電信交換システムに送られます。
為替電信交換システムは、この送られてきた電文データのあて先を
チェックし、該当する支店に電文振り分けを行い電信電文を転送します。
この仕組みは、メッセージスイッチングシステムといわれるもので、
銀行の為替オンラインシステムの初期のころは、この仕組みを使っていました。
当初は専用の電信電文交換機ですから、電文の振り分け機能のみの機能でした。
しかし、この単純な電信電文の自動交換システムでも相当な合理化だったのです。
次に、振込の電信電文を受信した支店の事務処理にも触れておきます。
センターの電信交換機から電信専用回線を通して、送られてきた振込電文は、
為替の端末の連続伝票に出力印字されます。
そして、この伝票をベースに、振込先の預金口座を探して、
振込依頼金額の入金処理を行うということになります。
この処理は、昭和43年には、普通預金はオンライ化されていましたので、
預金の端末で入力すればリアルタイムで処理が完結しました。
そして、振込入金があったことをお客様に、電話または、
郵送でご案内するというのが口座振込処理の一連の流れになります。
正常な処理でも多くの人手がかかっていたわけです。
これが、振込支店の間違い、振込口座相違の例外が発生すると逆の取引処理が
必要で大変手間のかかる事務処理だったのです。
これらの事務が月末・月初には集中します。
銀行の事務センター、営業店は大変な事務負担になっていました。
この分野に合理化のメスを入れる必然性は当然のことでした。
一方、他行振込の場合は、もっと大変でした。
他行振込の場合は、コルレス契約先銀行かどうかを点検します。
このコルレス契約先銀行というのは、お互いに資金決済できることを予め
契約した先の銀行のことです。契約がない先には振り込みはできません。
テラー(銀行の窓口係)が受け付ける段階でも確認はしていますが、
再度点検します。
全銀の為替オンラインシステムが開発されるまでは、
銀行により異なっていたのですが、集中事務センター方式か、
個別支店対応となっていました。
他行宛の振込電文に関しては、当時で言う暗号キィーを付加して、
電々公社の運営するテレックスシステムで電文の交換処理を行っていました。
勿論、振込処理は資金移動を伴うもので、資金決済も別の仕組みで行い、
常に正当に処理されたかどうかを照合するシステムも
紙ベースの伝票を使って、手作業照合が行なわれていました。
全銀データオンラインシステムが稼働したのが昭和48年4月と
いうことですので、
それまでの他行為替は大変手間のかかる仕事だったのです。
これ以降のテレックスシステムは、全銀システムに加盟していない
金融機関への取引等に一部残っていましたが、データ通信回線利用の
オンラインシステムに順次切り替わっていきました。
以上、簡単に説明しましたが、銀行でのデータ通信回線の利用分野としては、
この為替電信交換システムとテレックスシステムが事始だったと思います。
この為替電信交換システムは、専用の電信網を利用したもので、
現在のデータ通信回線とは別のものです。
最初のバンキングシステムでのデータ通信回線の利用は次回説明予定の
普通預金オンライン・リアルタイム・システムが最初になります。
銀行口座への資金振込処理は、現在では、
銀行店舗のATM装置からは勿論のこと、
コンビニのATMからでも、
家庭のパソコンからも携帯電話からも
インターネットバンキングシステムを使って
リアルタイムで処理が可能になっています。
随分進化したものです。
銀行の事務処理は堅実・確実性を要求されるために、
随所で、精査・ダブルチェックの仕組みを組み込んでいます。
この事務処理負担をバンキングオンラインシステムで順次解決し、
現在の総合バンキングオンラインの仕組みができあがったのです。
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