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2005.05.01

■ペイオフと「名寄せシステム」について

ペイオフの本格的解禁と「名寄せシステム」について

■はじめに

2005年4月からついにペイオフが本格的に実施されました。
言うまでもなく、当座預金や利息の付かない普通預金は「決済用」として全額
保護され、定期預金や利息の付く普通預金などは1金融機関につき預金者1人
当たり、元本1千万円までとその利息が保護される制度が解禁されました。

この「ペイオフ解禁」までには、紆余曲折がありました。

ペイオフ制度そのものは、1970年代に創設されましたが、90年代初頭に
信用組合の破たんが続き、ペイオフを凍結解除すると、預金者に動揺が広がり、
ひいては金融システムの危機につながりかねないと判断して、ペイオフ制度を
緊急避難的に凍結しました。

1996年には、2001年3月末までの間、特例措置として預金の全額を保
護することを決め、再び2002年3月末までペイオフ凍結を延長することに
しましたが、更に、再延長になり、2005年4月から本格的に開始になりま
した。ペイオフ制度は、創設から実に30年以上もかかったと言うことです。

ところで、このペイオフで問題になるのは「名寄せシステム」の方法について
の問題です。バンキングシステムは勘定の処理に関しては厳密な処理システム
を構築しているのですが、お客様の属性情報の管理システムに関しては、ルー
ズな面がありました。

マネーロンダリングの防止のための「本人確認法」の施行により、個人に関し
ての属性データも厳密に管理されるようになりつつありますが、それ以前の個
人の属性情報に関しては、借名預金や架空預金口座が多数開設されていました。
また、新約時には正確であったデータも更新がなされておらず、使えない、ご
み情報が多数存在しています。

皆さんは、銀行の預金口座で転居時に、住所等を変更なさっていますか?
結婚して姓が変わったときに改名届けをだしていらっしゃいますか?
転職した場合、銀行に届けを出していますか?

キャッシュカードが普及したために、キャッシュカードさえあれば、現金の出
し入れは不自由しないために、住所や勤務先の変更をしないでほったらかしの
お客様が多いのです。
これらの更新されない古い情報を使ってのマーケット分析には自ずから限界が
存在しています。いわゆる「GIGO」(ギャベッジ・イン・ギャベッジ・ア
ウト)と呼ばれる、役に立たない高額なシステム開発費用を支払った「情報シ
ステム」が数多く存在しています。

そこで、今回は、この「名寄せシステム」について考察してみたいと思います。

■名寄せシステムとは?

ところで、銀行の大衆化路線戦略とバンキングオンラインの普及により、個人
のお客様も法人のお客様も複数の金融機関に複数の取引口座を持ち、金融商品
が増えるに連れ、ひとりでいくつもの口座を開設したり、同じ銀行に何種類も
の商品を預けることが当たり前のようになっています。

ところが、ペイオフ解禁で預金の保護範囲が限定されるに伴い、預金の主体が
誰なのか明確にならないと預金総額を算出することが出来ません。その主体を
確定させることで重視されるのが「名寄せシステム」です。
「名寄せ」とは1銀行で1預金者の預金の合計金額を特定させる作業のことと
定義されます。従って「全店名寄せ」が必要になります。この「全店名寄せ」
は、実際に実施するとなるとデータの不備等により、いろいろな問題が発生し
てきます。

「名寄せ」の歴史は、バンキングシステムにとっても、古くて新しいテーマな
のです。

そこで、今回はこの「名寄せシステム」に関して過去を振り返ってみたいと思
います。

■CIFの時代

そもそも、「名寄せ」と言う言葉は、1960年代の第一次オンライン時代に
遡ります。
私が銀行に入行した1968年に始めて目にしたマニュアルが、米国のバンク
オブデラウェという銀行のCIFシステムの英文の事例マニュアルでした。

バンキングシステムがコンピュータで処理されるようになり、折角コンピュー
タ化されたデータを有効利用しようということになり、CIF(カスターマー
・インフォメーション・ファイルの略)の言葉が登場しました。バラバラのシ
ステムに分散しているデータを一元的にまとめて、総合的な顧客情報管理シス
テムを作ろうということに原点があります。

米国では、英数字文字の文化ですので名前もアルファベットでコンピュータに
入力が可能でした。しかし、当時、日本に米国から輸入されたバンキング用の
システムは、カナや漢字の処理する機能はなく、ローマ字か英文字と数字だけ
を使ったバンキングオンラインからスタートせざるを得ませんでした。ローマ
字の「名寄せシステム」には限界があるのは当然でした。また、この時代のコ
ンピューターシステムは、ディスク装置も高価であったために顧客属性等の登
録を最小限にした磁気テープベースのシステムでお客様の情報を一元的に活用
して、顧客採算等を分析しようと言うものでしたが、「名寄せ」は人手により、
CIF番号を採番し、これに口座番号・取引番号を関連付けると言う仕組みの
システムでした。

従って、名寄せの対象先は、大口の優良顧客に限定されたものでした。

■CISの時代

1970年代になり、第二次オンライン時代になると、「総合オンライン」と
いう概念になり、カタカナを利用できるようになりましたが、漢字を本格的に
使うまでには至っていませんでした。しかし、預金・為替・融資・ローン・外
為等の業務処理が総合オンラインシステムとして連携して動くようになってい
きます。

単に、情報の一元管理だけでなく、事務処理の省力化にも大きく貢献するよう
になります。この中で省力効果の大きかったシステムが預金と為替の自動結合
システムでした。この時代の為替の振込電文には現在と異なり、口座番号が入
力必須項目ではありませんでした。そのために、カナの振込人名から振込口座
番号を索引して、自動的に預金口座に振込入金処理を完結すると言うシステム
の開発を行いました。

即ち、この時代の「名寄せシステム」の関心は、同名異人、類似名の処理がシ
ステム構築の関心事でした。如何に、正確に、為替と預金の自動結合率を上げ
るかに関心を示した時代です。その後、為替の振込には、振込口座番号の入力
が必須項目になり、自動結合率は飛躍的に向上したのですが、これ以前のシス
テムとして「預為結合システム」の開発を懐かしく思い出されます。

この時代には、CIFは単なるファイルを作成するだけでなく、システムとし
て有効活用するという意味で、CIS(カスターマー・インフォメーション・
システム)とも呼んでいました。

■M-CIFの時代

CIF/CISのことをM-CIF(マーケティング・シフ)と呼ぶようにな
ったのが第三次オンラインの時代です。
1980年代の第三次オンライン時代になると、事務処理の省力化の追及は勿
論のことですが、バンキングシステムは、マーケティング戦略に活用すること
に重点を置いていきます。バンキングシステムを戦略ツールとして活用してい
こうという意識が高まっていきました。

お客様の情報を業容拡大、新規顧客の開拓、潜在顧客の掘り起こし等に活用し
ていこうということに関心が向いた時代です。従って、お客様の属性情報をで
きるだけ多く入力し、この属性情報を利用してマーケティング戦略に利用しよ
うという時代です。
この時代には、銀行店舗の開設には規制があり、どこに出店すべきか決定する
ためにエリアマーケティングの手法が適応された時代です。

■CRMの時代

カスターマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)と呼ばれる時代
がくるのが1990年時代以降になります。インターネットバンキングやテレ
ホンバンキングの普及、ATMのネットワークの拡大により銀行店舗に行かな
くても銀行取引の大部分を処理できるという時代になりました。お客様の「店
頭離れ」という現象が顕著になってきたのです。

銀行とお客様の接点がマルチチャネル化することになり、お客様との接点が多
重化してくるためにお客様とのリレーションシップを重視するためのシステム
の構築が必要となったのです。お客様の銀行取引に関してのビヘイビァや電話
での照会に接遇するためのコールセンターの機能の拡張がはかられました。

ここでは、マルチチャネルでの取引を一元的に管理するための「名寄せシステ
ム」が必要となってきたのです。

■本格的なペイオフ時代

今年から、本格化したペイオフ実施の時代になると「預金保険」の支払のため
の「名寄せシステム」が重視されるようになります。ところが、バンキングオ
ンラインの歴史から取引の長いお客様の属性データは不完全な状況でシステム
が稼動しているのです。従って、「名寄せ」に必要な最低限の「氏名・生年月
日・住所」すら正確に入力・保存されていなかったのです。これが、ペイオフ
のための「名寄せシステム」の精度向上が問題としてクローズアップしてきた
ということです。

■まとめ

「名寄せシステム」という言葉は、IT技術の進歩と金融環境の変化によりい
ろいろと意味合いが異なってきました。

その時々のニーズに応じて、「名寄せシステム」は、進化を遂げてきたわけで
すが、根本的な問題として、「本人確認法」の施行以前のデータは精度が低く、
その後の更新もなされないままに放置されていたというのが現実です。

従って、コンピュータに蓄積された、属性情報は、現実とは離れた情報を蓄積
していることになります。従って、これらの情報を更新するための仕組みを組
み込む必要があります。この方法として、ローンやクレジットカード等のセッ
ト販売により、新規データに更新する等の方法が必要ということになります。

単純に「名寄せシステム」といっても時代背景により、異なる意味合いがある
ことをご理解いただけたでしょうか。

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