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2007.07.30

◆年金管理システムの不備に関して

社会保険庁の年金管理システムの不備に関して

◆はじめに

平成19年の参議院選挙で与党が大敗しました。

原因はいろいろあると思います。

しかし、敗因のひとつに「年金の問題」があったことだけは確かのようです。

年金管理システムの不備が原因のひとつのようです。

事務処理の不備、システム管理の不備が国政を左右するとは・・・・?。

今回はこの「社会保険庁の年金管理システム」について考えてみました。

◆「社会保険庁のシステム管理不備」とは?

社会保険庁の年金管理システムが不完全で、年金記録が正確に把握されて
いないために、もらえる年金がもらえない。

年金を収納したものの誰の年金かが不明で宙に浮いている積立金が存在する。

紙ベースのままで、コンピュータに入力されていないデータ移行未済の年金
が存在する。

等々と「年金の事務管理システム」の不備が指摘されています。

いろんな意味で、現行の年金管理システムは、欠陥を抱えながら運用されて
おり、年金受給対象者にとっての不信感を招く結果となっているのです。

この不備の多いシステムを放置していたことの責任が参議院選挙にも反映
したのです。

与党にとって、システム不備の露呈は、「人災」ということです。

「年金管理システムの欠損」に学ぶという観点から考察してみます。

◆なぜ、システムの不備が糾弾されているのか?

「年金管理システムの不備」が指摘されていますが、成人した日本国民
の全員を対象とした大規模システムの恐ろしさを露呈した事例として捉える
ことができます。

もともと、年金管理システムは、手作業で管理していたものをコンピュータ
システムに移行する過程で起こる、コンピュータ化のトラブル事例のひとつ
という捉え方もできます。

バンキングオンラインで預金元帳をオンライン元帳に移行する過程で生じた
体験や、マル優の管理の問題、カナ元帳から漢字元帳への移行、印鑑イメージ
の登録移行とバンキングシステムの新システム導入に伴う移行上で発生する
事象から類推できる事象と極似しています。

この視点から、年金管理システムの欠陥の発生事由を類推してみました。

そもそも、制度発足時の手作業で管理しているシステムは、当然のことながら
コンピュータ化を前提としているわけではありません。

手作業で処理するのに都合のよい管理システムとなっていたはずです。

しかし、手作業プロセスには、プロセスの段階段階で必ず事務ミスの発生の
可能性が存在します。

まず、この手作業での事務管理システムが正確に運用されていたのかが問題
となります。

十分な事務ミス防止のための事務手続きがどれほど厳格に管理されていたか
に疑問が残ります。

お役所仕事の事務品質管理思想がどの程度浸透していたかです。

手作業管理システムでの事務ミス防止策には限界があります。

そこで、この手作業事務作業の事務ミスを減少させ、大量の事務処理に対応
するために出現してきたのがコンピュータです。

コンピュータ化により、大量事務処理の事務合理化が推進されてきました。

しかし、手作業事務処理体制から、コンピュータシステムへの移行は簡単
ではありません。

大量の移行事務負担を伴います。

手作業で利用されていた台帳をコンピュータの台帳に正確に移行することが
必要ですが、この移行過程の事務精度が問題になります。

この過程で移行事務ミスの発生の可能性が増大します。

社会保険の場合には、社会保険番号、氏名、生年月日、住所、その他属性、
年金収納金額記録等が基本データベースになります。

それ以外に、所属保険事務所、厚生年金収納企業、収納遅延データと収納結果、
過去にさかのぼっての収納記録等々と管理すべきデータ項目は多く、
データボリュームも半端なものではありません。

処理するためには、相当のコンピュータパワーを必要とします。

現在のコンピュータパワーと比較して、移行当初のコンピューターパワーは
弱小であり、システムの運用には相当の苦労があったものと推察されます。

年金管理システムは、制度変更や例外管理等のシステムの複雑さとデータ
ボリュームの規模から推定して、システムの運用は決して簡単なものではない
ものとと思われます。

そして、この年金管理システムに含まれる問題点のひとつに、
「氏名」、「生年月日」、「住所」という基本項目が管理の対象となって
いることが元凶となっているのです。

第一項目の「氏名」ですが、このデータ項目は扱いにくいデータのひとつです。

氏名の読み方は様々です。利用されている漢字も当用漢字以外の漢字が利用
されています。

この氏名データのカナ変換入力時に読み違い入力ミスの問題が発生します。

記入者の書いた文字が略字となっていたり、文字が達筆すぎて読み取れなか
ったり、逆に、みみずの這うような文字というか、下手で誤解を招くような
筆跡の文字であったりで入力ミスの可能性が増すことになります。

「氏名」は、姓と名に分かれるわけですが、この「姓」は、養子縁組や結婚
等で同一人物でも「改姓」という事象が発生します。

離婚により、元の「姓」に戻る場合も、戻らない場合も存在します。

「名前」も、戸籍上の名前と通称の名前を使っていたり、当初戸籍上に登録
した名前でも法的手続きにより変更される場合もあります。

「同姓同名」、「類似名」等と姓名を扱う事務では、事務ミス発生要因は
数多く存在します。

次に、第二項目の「生年月日」ですが、西暦4桁、誕生日の年月の4桁数字
の計8桁の数字ですが、366通りの数字しかありませんので、重複の
可能性は多くなります。

移行過程で、明治・大正・昭和・平成の年号を西暦に読み替える場合に
和暦と西暦の変換ミスを生じる場合もあります。

「生年月日」の8桁の数字すら正確に入力されているとは限りません。

「生年月日」をキーとして検索しても、重複対象が多すぎて単独での
検索キーにはなりえないのです。

第三の項目の「住所」ですが、このデータもコンピュータ処理には厄介な
データ項目です。

「住所」には、郵便番号が入力されていると思いますが、この郵便番号体系も
当初の体系から桁数が増えました。
また、時々変更になります。

住所表示に関しては、旧戸籍の表示と新住所表示の二通りの表示形式で
新旧の方式が存在します。
住所記述の仕方も必ずしも統一されていません。

更に、住所表示は、行政区分の変更等で住所変更が度々行われます。

これらの変更を正確にフォローするということは、コンピュータシステムの
データベースを管理する上でも容易なことではないのです。

年金積み立て者側でもこの住所変更をきめ細かに申告登録しているわけでも
なく、社会保険庁側のシステムでも正確にフォローするためのシステムが
整備されているとも思えないのです。

銀行の場合には、住所コードという外部購入のデータベースのコードを利用
していたのですが、このコードのメンテナンスも相応の負荷がかかっていま
した。

この対象が全国ベースの年金対象者全員に関わってくるとなるとデータ更新
にも相当なコンピュータパワーが必要となるのです。

以上のたった3項目の「姓名」「生年月日」「住所」というデータだけでも
コンピュータにインプットする段階でのミス発生の要素が多いのです。

この三項目の正確なインプットを年金対象者全員のデータベースとして管理
することがいかに難しいことであるかは、コンピュータシステムの開発運営に
関与した読者にはご理解いただけると思います。

決して、「社会保険庁のシステム不備」を擁護する積もりはありませんが、
システム運用上では、相当に困難なシステムであるということは確かです。

【編集後記】

本件は、コンピュータ入力と事務運用システムの基礎の基礎の問題なのです。

コンピュータにいかに正確にデータを入力するかは重要なことです。

「GIGO」という言葉があります。

「ガベッジ・イン・カベッジ・アウト」の略称です。

如何に立派なコンピュータシステムであろうと、データの入力管理がズサン
であれば、システムの価値が低減するのは当然のことです。

コンピュータ化に携わる人間は、この「インプットの重要性」を再認識
すべきです。


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