◆企業IT動向調査から金融業界の動向を探る
企業IT動向調査から金融業界の動向を探る
(2009年度の調査結果)
【はじめに】
米国発のサブプライムローンを発端として、世界経済は低迷してきましたが、
上海万博の開催を刺激として、中国経済の伸張やエコポイントによる内需
拡大等で、日本経済にも上向きの傾向が感じられるようになってきました。
と思っていた矢先に、ギリシャの国家財政悪化から、今度は、ヨーロッパ発
の世界経済の不安定化が発生してきました。
上向こうとしていた景気回復に冷や水を掛けるような現象が発生してしまい
ました。
この影響がどの程度のものかは、現時点では不透明な状況ですが、このよう
な先行きの読めない中で、企業のIT予算も削減傾向が続いており、IT業
界は活性化が期待できない状況にあります。
そんな中で、日本情報システム・ユーザー協会から
「企業IT動向調査報告」が公表されています。
今回は、この中から、金融業界に関連して、興味ある部分をピックアップ
してみたいと思います。
【調査の概要】
この調査は、日本企業のITに関しての動向を知る上で興味深いものが
あります。
今回の調査の重点ポイントは、
1)経営環境の変化に対応したIT活用策、
2)システムの信頼性・安定性の確保、
の視点からの調査となっています。
具体的には、
1)経営環境の悪化から、IT投資予算は、引き続き抑制の傾向が続いて
いますが、IT技術の進歩傾向は、継続しており、「仮想化技術」
「SaaS」「クラウドコンピューティング」などの新たな技術が
浸透しつつあります。
これらをいかにうまく活用していくかがテーマになります。
また、
2)ITシステムが社会の中に浸透するに従い、社会基盤の一部として
機能しています。従って、システムの障害が、社会生活に与える影響が
大きくなっています。
システムの障害がマスコミで大きく取り上げられるようになっています。
社会システムとして便利に利活用され、定着化してくるに従い、
システムの信頼性と安定性のニーズはますます増大してくるのは
当然のことです。この信頼性と安定性の現状はどうなっているのかが
調査の対象となっています。
【調査の結果から】
この調査結果から特に金融業界の動向をピックアップしてみました。
1)IT投資に関しては、金融業界の開発費も急減速しています。
金融業界の開発費と保守運用費の比率は、概ね、59:41の比率となって
おり、この開発費の落ち込みが大きかったものの、徐々に回復の兆しも
見えてきているようですが、抑制傾向であることには、変化がないようです。
大規模プロジェクトが一段落したのも影響しているかと思われます。
2)IT投資で解決したい課題と中長期的な経営課題としては、
「ビジネスプロセスの改革」「グローバル化への対応」
「企業間の情報連携」「ビジネスモデルの変革」が、
近年の定番となっていますが、昨今の時代背景から
「経営の透明性の確保(内部統制、システム監査への対応)」
「企業としての社会的責任の履行(セキュリティ確保、個人情報保護等)」
が、重視される傾向が浮き彫りになってきているようです。
3)情報システム障害とその原因としては、事業中断レベルの障害発生件数
が年間0件」の企業の割合が3/4と情報システムの障害対策が各企業に
浸透してきているようです。
この中で、興味深い試算がなされていました。
保守運用費(除く・ソフトウェア費用)と障害件数の関係で、
「事業中断に至るシステム障害」は、年間保守運用12億円当たり1件発生
という数字になっています。
この数字は、全業種の数字なので金融業界にすぐには当てはまるものでは
ありませんが、大変興味深い試算結果と思います。
自社の予算と比較してみていただくことにより、自社システムとの比較して
いただくことも可能かと思います。
4)金融機関の情報システムに関しては、調査の結果から、
高品質システムとの高い評価を得ています。
1/3の企業が「無停止」を実現しており、残りの企業でも、
99.999%以上の稼動実績となっています。
これは、金融機関のシステムが社会基盤のひとつとなっており、
社会的責任の重要性に対応したもので当然の結果ということでしょう。
5)日本の企業の基幹の情報システムの障害による月間停止時間は、
1.7時間と北米の大企業の月間停止時間14.7時間と信頼性が
格段に高いということです。
このことは、日本人のトラブルに関しての気質にも影響があるもののとは
思いますが、反面では、過剰投資にならないように予算管理の厳正化も
求められるのも現実です。
6)重要インフラ情報システムの信頼性については、
「重要インフラ事業者」として、
「情報通信、金融、航空、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス、医療、
水道、物流」の10業種の中でも、金融業が他業種と比較しても高水準
であり、過半数の企業が年間の障害による停止時間5分以下
(稼働率99.999%以上)を実現しています。
このことは、最近マスコミで、金融機関のシステム障害の報道が
少なくなっているとの実感と一致しています。
7)災害対策に関しては、本番機とバックアップマシンを別センターで
稼動させている企業は全体では二割、大企業では1/4になっていますが、
「金融業」では、45%が複数センターで稼動させています。
金融機関では常識と考えていることが、一般の企業では、浸透していない
ということです。
地震等の大災害時に課題を残しているというのが現状のようです。
8)情報システムの信頼性向上に関する悩みとしては、
「要員の不足」が首位を占めているものの、「開発時のテスト不足」
「企画・設計段階のレビュー不足」「ベンダーのサポート不足」等
の原因は、低減傾向にあり、システムの信頼性確保への意識が浸透して
きているようです。
【まとめ】
今回は、企業のIT動向調査をベースに金融機関のITシステムの特徴を
ピックアップしてみました。
金融機関のIT化は、長い歴史があり、技術革新の進歩に合わせて、
時代ニーズに応じて各種のサービスを提供してきています。
この過程で、数多くのノウハウの蓄積があります。
このノウハウの蓄積が、ユーザー側、システムベンダー側に蓄積され、
信頼性の高い金融情報システムが情報社会のインフラとして機能しています。
このことは、誇るべき事実と思います。
しかしながら、これらのノウハウが次世代に順調に継承されているのか
どうかについては、疑問と思われることが多いように思います。
システムにも関与する要員にも世代交代は避けては通れない現実です。
次世代を担う要員を今から長期計画で育成していくことの重要性を痛感する
次第です。
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